彼の場合
そしてまた
僕はウソをついた
それは真っ赤な嘘でもなく
真っ白な嘘ってわけでもなく
なんとなく隠し事をしてしまったときにつく
白々しい青色のウソ
「今日は家の用事があるから
何時に行けるかわからないよけど
必ず行くから待っててね」
彼女のメールにはそう書いてあった
彼女と僕が
僕の家で会う約束をしているとき
もしどこかに出かけるようなことがあれば
それが近所のコンビニであっても
必ず彼女に連絡するってのが
僕らの決めたルールだったんだ
その日は前から先輩に誘われてて
一緒にパチンコに行く約束をしてたんだ
彼女のメールを見た時に
「僕も今日用事があるから、来る前に連絡してね」
たった一行そう打って
返信すればそれで済む話だったんだ
なのにいったいなんでだろう
「ずっと待ってるから早く来てね」
なんて打って返信ボタンを押している自分がいた
しかも最後に「大好きだよ」までつけてる始末
今回が初めてじゃないんだ
僕はいつだってそうなんだ
別にやましいこと
してるわけじゃないのに
彼女に本当のことが言えない
彼女のいない間に僕のしていること
全然たいしたことじゃないのに
言っても怒られるようなことじゃないのに
なぜか本当のことが言えない
そしてそんなウソをついたときは
決まって彼女は早めに僕の家に来ていて
その場にいない僕の携帯に
「どこ?」
とたった一言だけ書いてあるメールを打ってくるんだ
「やばい、またばれた」
あせって携帯から電話を入れて
きちんと今いる場所とスチュエーションを伝えて
そして速攻家に帰る
彼女は当然怒っている
「もう帰る、信じらんない。また約束破った」
決まって彼女はそう言うが
怒りながらも必ず家で待っている
そしてここからが彼女の説教タイム
言われるのは毎回おんなじこと
もうとっくに暗記したので
僕の代わりに僕が
僕に説教することができるぐらいだ
「なんでウソつくの?」
「やましいことしてないのになんで隠すの?」
「前もって言えば済むことじゃん」
「ほんとは浮気してたんでしょ」
「もう何もかもが信じられない」
「大好きっていったあの言葉もウソなんだ?」
「どこからがほんとうでどこからがウソなの?」
「それともみんなウソだったわけ?」
まあこんなところだ
自分だって
なんでウソをついちゃったのかわからないんだから
うまい言い訳なんかできるわけがない
こんなときは黙って下を向いて
彼女の怒りが静まるまで
ずっと反省したフリをする
いや、反省はしているつもりだ
ていうかなんでまた僕は
つく必要のないウソをついてしまったんだろうと
ずっと考えている
「もうほんといや、いやいやいや」
「次に約束やぶったら、絶対別れるからね」
だいたいこんなところで話は終わる
気まずい雰囲気の中
僕はまた考える
軽率についてしまったウソの理由を
明らかにわかることは
ウソをついた場合よりも
ウソをつかないで最初から
本当のことを言えば
彼女を泣かせずに済んだってこと
お互いに傷つかずに済んだってこと
それでも僕がウソをつき続ける理由は
いったいなんなんだろう?
キミがいない間はずっと、
キミのことだけを待ち続けて
ずっと1人で家にいるんだよ
そんなポーズを
なんとなく貫いてみたくて
いやむしろ
彼女がそれを望んでいるような気がして
咄嗟に口をついて出てくるのが
この青色のウソってやつなんだ
でももし
この青色のウソってやつを
ボクがつかなくなるときが
いつか来るとしたら
それは多分
僕たちの恋が
透明な空に蒸発して
なくなっていくときなんじゃないかな?
なんて
なんとなく思ったりしてるんだけれど
彼女にはきっと理解できないと思うから
ずっと言わないでおこうと思うんだ 。
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